エッセイ④

地域芸能について学生と共に考える

概要

「まーすけーいロード・プロジェクト」では、読谷村・長浜に伝わる「まーすけーい歌」にもとづく影絵人形劇を制作しました。影絵芝居には、長浜の子どもたちの人形のほかに、沖縄女子短期大学で保育を学ぶ学生たちの作った人形たちも参加。大学生たちは歌を聴き、昔の情景を思い浮かべながら、昔の少女たちの物語を想像していきました。この経験を彼らはどのように繋いでいってくれるでしょうか。このプロジェクトにご協力いただいた沖縄女子短期大学助教の羽地知香さんに、学生たちと影絵人形の制作を行った際の様子についてエッセイをご執筆いただきました。

地域芸能について学生と共に考える

文/羽地知香

沖縄の子ども達の保育を行っている時に地域のどこからか流れる三線の音や青い海はとても身近で、当たり前の生活の一部になっているように感じた。まーすけーいの歌を地域の方が三線で奏でた歌を聞いた時、言葉にできない気持ちが心にわいてきた。改めて子どもたちに沖縄の芸能や文化を大切にして欲しい思いと同時に保育士時代に5歳の子ども達とバスに乗って首里城をめざし、沖縄の事を調べ、首里城に感激したことを思い出した。

今回、まーすけーいの影絵を学生と制作する機会を頂き学生たちととても楽しみにしていた。影絵の人形を作り始める前にまずは、まーすけーいの事を学ぼうと読谷で行われた講演会を学生と拝見すると、学生にとっては講座の話が身近に感じるのか身を乗り出し講演会をみていた。また、講演会の中に出てくる地図を見ながら自分たちで現在の場所を確かめて、今と昔の違いに驚きの声をあげていた。学生たちは、想像以上の興味を示していたことに正直私の方が驚いた。何をしても楽しそうにおしゃべりが止まらない学生が、まーすけーいの歌に耳をじっくり傾け、「これここの事を言ってるよね」「この場所わかるよ」「あの坂は急よねー」と塩を運んでいた時代にタイムスリップしているようだった。

長浜に想いを馳せながら人形を制作長浜に想いを馳せながら人形を制作

いざ影絵の作成に取り掛かろうとすると手がとまり「どうやって作ろう」と困っている横では、「きっと運んでいる人ってモデルみたいだと思うからこんな感じかな?あの橋の向こうの坂道っとってもきついからさ、塩を運ぶのにね、ゴロゴロつけるよ。」「歌を歌いながらだから顔は上向いてるね。」など影絵を作る活動と地域の情景とが重なり、楽しそうに紙を切ってどんどん塩を運ぶ娘たちができあがっていった。作り終えると嬉しい気持ちからか「動かしたい」とまーすけーいの歌を自分たちで探し来て聞いていたり、作ったものを学生同士で見せあっていた。昔から地域に伝わる歌、子ども、大人、様々なモノが重なりあって、一つの文化や作品、想いがつながっていく瞬間だったように感じた。学生のフィルターに通した「まーすけーい歌」は、とても素敵なモノで、この経験を保育士となり地域に広げて欲しいと思った。

著者プロフィール

羽地知香(はねじ・ちか)

沖縄女子短期大学助教、専門は、障がい児保育。約25年間の保育士経験を基に障がいを持った子どもたちの理解を深めるための授業を展開中。また、子どもや保護者が安心して子育てが出来る地域を作るために子育て支援の場『木漏れ日喫茶』で保育士として誰でも楽しく参加できる遊びを提供している。県、市町村の研修、県内の保育園、幼稚園、放課後児童クラブの職員へ障がいを持つ子どもの理解、遊びと環境についての研修を多数担当。