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地域芸能と歩む

地域芸能の現場をフィールドワークする 第1回(読谷村)

開催レポート

地域芸能の現場をフィールドワークする 第1回(読谷村)

概要

8月11日(日)、「読谷村・渡慶次地区×宮城県・山元町 タウンミーティング」を開催しました。43名の参加者のみなさんとともに、変容し続ける地域コミュニティの中で、地域芸能を持続可能な形で未来へと受け継いでいくためにどうすべきかを考えました。当日の様子をレポートします。

レポート

文/向井大策

photo:當麻妙photo:當麻妙

8月11日(日)、「読谷村・渡慶次地区×宮城県・山元町 タウンミーティング」が開催された。読谷村と宮城県山元町の二つの自治体で、ともに地域芸能にたずさわっている人々が交流し、それぞれの地域芸能を持続可能な形で未来へと受け継いでいくためにどうすべきかを共に考え、話し合う場として企画されたものだ。

沖縄と東北。距離にして2,400kmも離れ、地域的な特色も、また演じられる芸能も異なる。しかし、今回の参加団体には、それぞれに地域芸能の継承のために次の世代の子どもたちへと教え伝える、特色ある活動を行っているという共通項がある。このことから、変化を続ける地域コミュニティの持続可能性と地域芸能との関わりについて考える場が持てるのではないか。会場となった読谷村・渡慶次公民館には、読谷村から24名、県内外からの一般受講生12名、そして宮城県山元町からの7名、合わせて43名の参加者が集い、地域芸能の持続可能な継承のためには何が必要なのかを語り合った。

読谷村・渡慶次子ども獅子舞クラブの練習風景 photo:當麻妙読谷村・渡慶次子ども獅子舞クラブの練習風景 photo:當麻妙

読谷村・渡慶次地区、宮城県山元町、それぞれの地域芸能のいま

今回の対話プログラムのホストを引き受けてくださった読谷村・渡慶次地区には、260年以上前から受け継がれている獅子舞があり、地区の保存会によって継承されている。1993年(平成5年)には、「渡慶次子ども獅子舞クラブ」が結成され、伝統の獅子舞を次の世代へと教え伝える取り組みを継続している。「渡慶次子ども獅子舞クラブ」は、県内外・国内外との交流事業も積極的に行っており、今年(令和元年)も第37回オキナワン・フェスティバル出演(8月31日〜9月1日)のため、ハワイに遠征を行った。今回の対話プログラムでは、まず、ハワイ公演に向けての練習風景を見学し、その後、指導者代表の田原さんから、渡慶次獅子舞の歴史、クラブの沿革や日頃の取り組みについてお話しいただいた。伝統の継承とは「ヒト モノ コト」をつなぐこと、と田原さんは語る。では、それを持続可能なかたちで継承していくためにはどうすればいいのか。プレゼンテーションの最後に発せられた問題提起は、今回の対話プログラムのテーマとも共鳴するものだった。

読谷村・渡慶次子ども獅子舞クラブの練習風景 photo:當麻妙読谷村・渡慶次子ども獅子舞クラブの練習風景 photo:當麻妙

宮城県山元町からは、坂元神楽保存会、中浜神楽保存会、そして山元町立坂元小学校の佐々木教諭より、山元町における神楽の継承の取り組みについてお話しいただいた。山元町は2011年(平成23年)の東日本大震災で甚大な津波の被害を被った。特に沿岸部の中浜はほとんどの家屋が流され、地区の天神社の奉納芸能であった中浜神楽の保存会も、面や道具、古文書を失うという被害に見舞われ、天神社での神楽の奉納も途絶えてしまった。しかし、2013年(平成25年)、廃校となった中浜小学校と合併した坂元小学校で、中浜神楽保存会と地元の坂元神楽保存会が協働し、「子ども神楽」の取り組みが始まる。それぞれにこだわりをもつ異なる保存会が協働して子どもたちに芸能を教えることはまれだ。坂元小学校では二つの保存会の思い、そして教諭たちの熱意によってそれが実現した。中浜神楽と坂元神楽の保存会は、子どもたちに神楽を教え伝えることを通じて、それぞれの神楽の再生に向けた一歩を踏み出そうとしている。

宮城県山元町・中浜神楽保存会のみなさん photo:當麻妙宮城県山元町・中浜神楽保存会のみなさん photo:當麻妙

宮城県山元町・坂元神楽保存会のみなさん photo:當麻妙宮城県山元町・坂元神楽保存会のみなさん photo:當麻妙

地域芸能の課題

対話プログラムでは、読谷村・渡慶次地区、宮城県山元町の両者が互いに自己紹介を行なったあと、コミュニティ・デザイナーの出野紀子さんのファシリテーションで、グループに分かれてディスカッションを行なった。地域芸能の継承を持続可能なあり方へと転換するために何が必要か。1)地域芸能がいま抱えている「課題点と大事にしたい点」、2)地域芸能を継承するために「自分たちができそうなこと」、そして、3)「今は関わりがないけれど関わってもらえそうな人、お願いできそうなこと」という三つのテーマをもとに対話の時間がもたれた。以下、各グループの話し合いの記録をもとに、ディスカッションの中で参加者からどのような意見が出されていたのかをまとめてみたい。

photo:當麻妙photo:當麻妙

まず、最初のテーマ「課題点」からは、地域芸能の継承が様々な課題に直面していることが改めて浮き彫りになった。例えば、人材の育成(指導者、後継者)、保存会・自治会など既存の組織の弱体化、財政面や道具など物質的な面での支援の必要性などは、芸能の継承に直接関わりのある課題であると言える。一方で、ライフスタイルの変化や地域住民の都市部への転出が芸能の継承に及ぼす影響、地域文化や伝統に対する住民の意識の希薄化など、参加者の多くが地域芸能をめぐる状況に課題を感じていることも浮かび上がった。参加者のディスカッションから見えてきたのは、地域芸能の継承において、「ヒト モノ コト」のそれぞれに様々な課題が存在するという現状だった。

たくさんの意見の中には、より具体的な課題点を指摘するものもあった。例えば、子どもたちに地域芸能を教えても、「子ども○○で終わっていないか」というような指摘だ。次世代への継承を考えるとき、教え伝えることをどう定着していくかは重要な課題の一つとなる。「習った子どもたちが次の子どもたちへ教えていける環境づくり」など、そのための工夫や仕組みづくりについての提案もあがっていた。また、特定の指導者任せにしない体制を作ること。保存会や自治会といった既存の組織の弱体化にともなって、人や組織をつなぐ人材やコーディネーターの必要性が重要な課題としてあげられていた。さらに、人材育成や組織に関する課題としては、地域芸能の継承が関係者や地域の中で完結していることを指摘する意見もあがっていた。

photo:當麻妙photo:當麻妙

地域芸能において大事にしたいこと、そして自分たちにできそうなこと

一方、「大事にしたい点」として多かったのは、地域芸能に対する「意識」の問題だった。最も多かったのは「楽しむ」ということ、ついでモチベーションを大事にしたいという意見があがっていた。どんなに素晴らしい芸能でも、「気持ち」がなくてはつながらない。仕組みづくりや環境整備だけでなく、人々が地域芸能に対して肯定的な意識を保つことができるかどうかも、持続可能な継承のカギとなっていることが分かる。また、地域アイデンティティのありように関する意見も多かった。地域を思う心や伝統を継承しているという誇りを大事にしたい、という意見が多くあがったのは、地域文化や伝統への興味関心が住民のあいだで希薄になっている現在の状況の裏返しであるようにも思われる。地域芸能の継承には、地域アイデンティティの涵養が重要であると、多くの人が感じていることが浮かび上がってきた。

photo:當麻妙photo:當麻妙

ディスカッションの二つ目のテーマとして話し合われたのは、「自分たちにできそうなこと」だ。新たな仲間づくり、地域芸能への支援や応援、担い手同士の連携、情報や魅力の発信、新たな上演機会の創出、技術の伝承、記録・研究することなど、多種多様な意見があがってきた。地域芸能の抱える課題を解決し、持続可能な継承を可能にするために「自分たちにできること」はたくさんある。その中で最も多くあげられたのは、新たな仲間づくりだ。これはディスカッションの三つ目のテーマ「今は関わりがないけれど関わってもらえそうな人、お願いできそうなこと」とも関連する。「今は関わりがないけれど関わってもらえそうな人」は、どれくらい自分の周りにいるだろうか。もしそういう人がいたら、その人たちに何がお願いできるだろう。

例えば、地域芸能の経験者は一番身近な存在であると言ってもいい。かつて芸能をやっていた先輩たちにもう一度関わりを持ってもらいたい、先輩の声を聞いてみたい、何かいっしょにやってみたい、などの意見があがっていた。地域の若者たち、とりわけ中高生に関わってほしいという意見も多い。学業や部活動などで、地域芸能から離れてしまう若者は多いようだ。一方で、彼らの若いエネルギーを芸能に向けてほしい、と願う地域の人たちもいる。そのことが地域の活性化にもつながるかもしれない。また、子どもたちが地域芸能に参加することをきっかけに、その親たちにも興味関心を持ってもらいたいという意見も多かった。地域の外に目を向けてみると、研究者やプロの実演家たちに期待する声が多くあがっている。「研究を地域に還元してほしい」という意見や、「魅せる技術の指導」や「子どもたちを惹き付けるようなアレンジ」を期待する声もあった。

photo:當麻妙photo:當麻妙

人とのつながりを大事にすること

「今は関わりがないけれど関わってもらえそうな人」は、身近な場所にも、地域の外にも、また世代も超えて存在していることが分かった。では、その人たちとどのようにしてつながることができるだろうか。今回の対話プログラムでは、グループ・ディスカッションの後、各グループで話し合われた内容を発表して共有した。あるグループからは、これまで女性が地域芸能に関わることがなかったことをあげて、地域の女性たちの参加を促したいという意見が発表された。どうすれば、女性たちにも関わってもらえるだろうか。別のグループから、獅子舞がかなり運動量の多いものであることに着目して、健康づくりと結びつけてみたらどうか、とのアイデアが出された。地域芸能に参加することへの敷居を下げると同時に、積極的な動機づけも促す。こうした工夫は、これまで関わりが薄かった人たちとのつながりを見出すきっかけの一つになるかもしれない。

地域芸能とは、元来とても豊かなものだ。そこには音楽があり、踊りがある。獅子頭や面、衣装といった特別な道具がある。長い時間をかけ、「ヒト モノ コト」の一つ一つを大切に育み、受け継いできた人々の叡智がある。その意味で、地域芸能そのものが一つの学びの場でもあり、それに関わる私たちの人生を豊かにしてくれるものでもある。

「地域を思い、伝統をつなぐことは、人とのつながりを大事にすること」――参加者のディスカッションを総括しながら、冒頭の田原さんの言葉がよみがえってきた。人のつながりがあってこそ、地域の伝統は継承される。また伝統の継承の中で、地域における人のつながりも育まれていく。持続可能な地域芸能の継承のカギは、この循環を絶やすことなく、「人とのつながり」を創出・再生していくことにあるのではないか。今回の対話プログラムは、全体で何か一つの答えを導き出すことを意図したものではなかったが、沖縄と東北、二つの地域芸能の担い手たちが一つのテーマのもとに出会い、さらに外部の人たちも交えて対話し、様々な思いを共有することで、そのことを確かめることができたように思う。

photo:當麻妙photo:當麻妙

インフォメーション

第1回 「 子どもたちへと伝えるモノ、子どもたちから伝わるコト――読谷村・渡慶次地区×宮城県・山元町 タウンミーティング 」

日時 2019年8月11日(日)15:30〜19:00(集合 15:15)
会場 読谷村・渡慶次公民館(沖縄県中頭郡読谷村字渡慶次 180)